DX推進

DX と顧客体験(CX)の向上、デジタルが“選ばれる理由”を生み出す瞬間

はじめに

DX を語るとき、内部効率やコスト削減ばかりが注目されがちですが、投資を価値に変える本当のドライバーは顧客体験(CX)です。

サブスクリプション、EC、オンデマンドサービス、どの業界でも「体験が良い企業にユーザーが集まり、データとフィードバックがさらに体験を磨く」という好循環が生まれています。本稿では、DX が CX をどう変えるのか、そして自社の“選ばれる理由”をデジタルで作り込む具体策を探ります。


この記事の執筆者

クリーヴァ株式会社
代表取締役/CEO
宮崎達也

大手エンターテイメント企業の音楽記信事業にてWebデザイナー、Webシステム開発ディレクションに従事。大手通信キャリア企業で企業の立ち上げからWebコンテンツプラットフォームの開発、Webサービス企画と幅広い業務を遂行。2019.9少数精鋭のWebコンサルティングギルドを通営するクリーヴァ株式会社を設立。



なぜ今 CX が経営課題になるのか

スマートフォン一つであらゆるサービスを比較できる時代、顧客は価格やスペックだけでなく「使いやすさ」「応答の速さ」「パーソナライズ度合い」でブランドを選別します。従来はマーケティング部門だけのテーマだった CX が、今や開発・物流・コールセンターまでも巻き込む全社ミッションになった背景には、以下の構造変化があります。

・購入から利用・解約まで、ジャーニーが長く可視化可能になった
・デジタル接点が“顧客データ”を生み、体験改善の燃料になる
・SNS での口コミ伝播がブランド価値をリアルタイムで増減させる

DX とは、このジャーニー全体をデータで捉え、顧客に寄り添いながら“気づかれない摩擦”を取り除く仕組みをつくる営みだと言い換えられます。

CX を高める DX の4つのレバー

データ統合――“一人の顧客”を正しく認識する
店舗購買、EC 行動、サポート履歴。バラバラに蓄積されたデータを統合 ID で紐づけると、顧客の意図や嗜好が一気に解像度を増します。統合基盤を持つ企業ほど、リコメンド精度やオムニチャネル施策の効果が跳ね上がるのはこのためです。

リアルタイム連携――“いま”の行動を捉えて応える
データが揃っても、活用がバッチ処理では CX は向上しません。カート離脱直後にプッシュ通知でクーポンを出す、店頭受取り在庫をアプリに即時反映させる――こうしたリアルタイム性が「気が利くブランド」体験を作ります。

パーソナライズド UX――“私のため”と感じさせる演出
AI レコメンドやダイナミックプライシングは手段に過ぎません。要は「なぜこれが私向けの提案なのか」が自然に伝わる文脈設計です。メッセージ頻度やビジュアルも行動履歴に応じて変えることで、ノイズではなく“価値ある提案”になるかが分かれ目になります.

エンドツーエンド改善ループ――“不満の芽”を潰し続ける
CX を KPI 化し、NPS やカスタマーエフォートスコアを常時モニタリングすると、改善すべき摩擦点が可視化されます。DX チームはアジャイルな改修サイクルで小さな実験を繰り返し、顧客の声を速やかにプロダクトへ反映する文化を根付かせることが核心です。

事例に見る CX ドリブン DX

事例1:多拠点小売チェーン E 社
アプリ・POS・EC を ID 連携し、在庫情報を秒単位で同期。店頭でサイズ欠品している商品をその場で EC 手配し、翌日配達率 95%を達成しました。結果として「欲しい瞬間を逃さない体験」が来店頻度と購入点数を押し上げ、導入1年で LTV が 30%向上。

事例2:サブスク SaaS 企業 F 社
ユーザー行動ログとチャーン分析を紐づけ、離脱兆候を AI が検知。カスタマーサクセスが即座にハンズオン支援を打つ仕組みを作り、月間解約率を 1.8%→0.9%に半減。顧客が「放置されていない」と実感するサポート体験が安定収益を支えています。

ポイントはどちらも 「反応速度×個別最適」 を徹底し、体験向上が売上や解約率に直結する数値で示されたことにあります。

現場へ落とし込む3ステップ

CX マップを描き、摩擦ポイントを定義する
顧客の行動・感情・タッチポイントを時系列で可視化し、“待ち時間”“重複入力”など具体的摩擦を洗い出す。

改善仮説を小さく実装し、AB テストで効果を測る
新UI・チャットボット・在庫連携など単一要素をスプリント開発し、コンバージョンや NPS で差分を確認。

成功施策を横展開し、バックログを継続運用する
効果が確認できた改善をテンプレ化して他チャネルへ適用。未解決の摩擦をバックログに蓄積し、毎スプリントで潰し込む。

まとめ

DX の究極的な目的は、顧客の心に“選ばれる理由”を積み上げることにあります。データ統合とリアルタイム連携で顧客を深く理解し、パーソナライズされたサプライズを届け続ける企業こそが、市場の変化を味方に付けて成長します。CX 改善を KPI 化し、アジャイルな改善ループを日常オペレーションへ溶け込ませる――その瞬間、DX は単発施策ではなく“顧客と共に進化する仕組み”へ昇華するのです。

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