LINEミニアプリで業務やお客様の窓口を作る前に決めること:通知・審査・料金・名義
作業員への連絡も、お客様の予約も、みんなが毎日開いている LINE の中で済ませたい。そう考えて「LINEミニアプリ」を調べ始めたものの、似た言葉が多くて迷うことがあります。この記事では、LINEミニアプリや LINE への通知を業務に組み込む前に決めておくこと(何を LINE でやるか、未認証と認証済のどちらで出すか、審査の期間、通知の数え方と料金、誰の名義で作るか)を、LINEヤフーの公式資料と株式会社ステラ様の例をもとに順にまとめます。
現場の作業員に、明日の案件の情報を送る。お客様から予約を受けて、前日にお知らせを送る。こうした連絡を、専用のアプリを入れてもらわずに、いつも使っている LINE の中で済ませたい。そう考えて「LINEミニアプリ」を調べ始めると、似た言葉がたくさん出てきます。LINE公式アカウント、Messaging API、LIFF、LINEミニアプリ、未認証ミニアプリ、認証済ミニアプリ、サービスメッセージ。どれを使えば自社のやりたいことができるのか、費用はどこにかかるのか、いつから使えるのか。ここが分からないまま開発会社に相談すると、話がなかなか前に進みません。
この記事は、LINE を使った仕組みを作ろうとしている事業の責任者や、社内のまとめ役に向けて書いています。次のことを順にまとめます。
- LINEミニアプリとは何か(公式の説明)
- 「LINE でやること」を、通知・画面・会話の3つに分ける
- 株式会社ステラ様が、作業員への連絡を LINE に移した例
- 作る前に決めておく5つのこと(未認証か認証済か、審査の期間、通知の数え方と料金、誰に届けるか、名義)
- LINEミニアプリではできないこと
- 開発会社に相談する前のチェックリスト
事実は、LINEヤフー株式会社が開発者向けに公開している「LINE Developers」の資料で確かめ、本文にリンクしています。料金や機能は変わることがあるため、2026年11月時点の内容です。アプリ開発全般の進め方や費用の目安は、SucSak の「アプリ開発の外注」などの記事にまとまっています。この記事では、LINE の中で動く仕組みに絞ります。
LINEミニアプリとは
LINE Developers の「LINEミニアプリとは」では、LINEミニアプリを次のように説明しています。
- LIFF(LINE Front-end Framework)の上で動くウェブアプリであること
- ユーザーは、アプリをインストールしなくてもサービスを使えること
- ウェブアプリなので、HTML5 のほとんどの仕様が使えること
LIFF は、LINEヤフーが提供するウェブアプリの土台です。LIFF の概要によると、LIFF で動くアプリは、LINE のユーザーID などを LINE から受け取れます。このため、自社で会員登録やログインの仕組みを一から用意しなくても、画面を開いた人を見分ける仕組みを作れます。現場の作業員やお客様に、新しいアプリを入れてもらったり、新しいアカウントを作ってもらったりする手間を減らせる。ここが、LINE の中で作る大きな利点です。
なお、同じページには、LIFF と LINEミニアプリはブランドを統合する予定で、新しく LIFF アプリを作るときは LINEミニアプリとして作ることを勧める、と書かれています。これから作るなら、LINEミニアプリとして作る前提で考えておくのがよいでしょう。
「LINE でやること」を3つに分ける
「LINE で業務をしたい」という相談の中身は、たいてい次の3つが混ざっています。分けて考えると、使う仕組みと費用の発生する場所がはっきりします。
| やりたいこと | 例 | 主に使う仕組み |
|---|---|---|
| ① 通知を送る | 案件の割り当て、予約の確認、前日のお知らせ | LINE公式アカウントと Messaging API、またはミニアプリのサービスメッセージ |
| ② 画面で操作してもらう | 予定の確認、出欠の回答、予約、会員証の表示 | LINEミニアプリ(LIFF) |
| ③ 会話する | 問い合わせへの返信、チャットでの相談 | LINE公式アカウントのチャット、自動応答 |
①の通知は、LINE公式アカウントから、決まった人にメッセージを送る形が基本です。②の画面は、通知の中のリンクや、トーク画面に出るメニュー(リッチメニュー)から開いてもらいます。LINEミニアプリとはのページにも、LINE公式アカウントのリッチメッセージやリッチメニューに、ミニアプリを開くリンクを置けると書かれています。
実際の業務では、①と②を組み合わせることが多くなります。「通知で知らせて、詳しい中身はミニアプリの画面で見てもらう」という形です。どこまでを通知で済ませ、どこからを画面にするか。これを先に決めておくと、見積もりのぶれが小さくなります。
作業員への連絡を LINE に移した例
クリーヴァがシステムを開発した株式会社ステラ様は、神奈川・東京の建築現場で、資材の搬入や荷揚げ、建て方工事などを行う会社です。
インタビューによると、以前は予定共有のアプリを使い、従業員やパートナーの方に、一人ひとり手作業で案件の情報を送っていました。情報をコピーして貼り付けて送り、さらに連絡漏れがないかを確かめる。作業員の手配と情報共有だけで、多くの時間を使っていたそうです。
いまは、システム上で案件に担当の作業員を決めると、その作業員の LINE に案件の情報が自動で送られます。その結果、作業員の手配にかかっていた事務作業が、1日あたり約2時間減りました。手作業による連絡漏れも防げるようになった、と話していただいています。
このシステムでは、職人の方が使う側の画面を LIFF で作りました。LIFF の画面は LINE の中で開くので、職人の方に新しいアプリを入れてもらう必要はありません。
この例から分かるのは、LINE を使うこと自体よりも、「誰に・いつ・何を送るか」が業務の流れの中で決まっていることが大事だ、という点です。担当者を決めたら自動で通知を出すには、システムの中で「案件」と「担当の作業員」と「その人の LINE」がつながっている必要があります。業務の流れを先に図にしておく方法は、「業務の流れを図にする」にまとめています。
決めること1:未認証で出すか、認証済で出すか
LINEミニアプリは、LINEヤフーの審査を通っているかどうかで、未認証ミニアプリと認証済ミニアプリに分かれます。作ったばかりのミニアプリは未認証で、審査を通ると認証済になります。
カスタム機能のページには、どちらで何が使えるかが表になっています。主なものをまとめると、次のとおりです。
| 機能 | 未認証 | 認証済 |
|---|---|---|
| サービスメッセージ(操作への確認の通知) | 使えない | 使える |
| ホーム画面にショートカットを追加 | 使えない | 使える |
| 共通プロフィールのクイック入力 | 使えない | 使える |
| 画面上部にミニアプリの名前を出す | 使えない(URL のドメインが出る) | 使える |
| LINE公式アカウントの友だち追加に誘導 | 使える | 使える |
| 決済システムの利用 | 使える | 使える |
また、LINEミニアプリとはのページによると、LINE の検索からミニアプリを探せる機能や、ホームタブの「最近の履歴」に表示される機能も、認証済ミニアプリだけのものです。
ここから、次のように考えられます。
- お客様に見つけてもらい、使い続けてもらうミニアプリ(予約、会員証など)は、認証済を目指す前提で計画する
- すでに LINE公式アカウントの友だちになっている人に、リンクから開いてもらう使い方が中心なら、まず未認証で動かし、必要になった機能に応じて認証を検討する
どちらにするかで、次の「審査の期間」をスケジュールに入れるかどうかが変わります。
決めること2:審査の期間を、公開日の前に入れておく
審査の申請のページには、次のように書かれています。
- 審査が終わるまでに1〜2週間程度かかる
- 却下された場合、再申請と再審査に、さらに数日かかる
- 審査の完了日は、事前に指定できない
つまり、「この日にお客様向けに公開したい」という日がある場合、開発が終わってから審査を出すと、公開日がずれる可能性があります。審査の分の期間と、1回却下されたときの余裕を、最初からスケジュールに入れておく必要があります。
同じページには、審査を出す前に確かめることも並んでいます。たとえば、次のような点です。
- LINE Developers に登録したプロバイダー名が、サービスの提供者と同じであること
- チャネルの説明に、正しいサービスの内容が書かれていること
- プライバシーポリシーで、ユーザー情報を取得する会社を、プロバイダー名と同じ会社にしておくこと
- アイコンの仕様や、読み込みの速さなどのガイドラインに従っていること
このうち、プロバイダー名とプライバシーポリシーは、開発を始める前に決めておくべきことです。後で触れる「名義」の話につながります。
決めること3:通知の数え方と、月の料金
LINE公式アカウントには、無料のプランと、月額の固定費がかかるプランがあります。どのプランでも、毎月決まった数のメッセージを無料で送れます。Messaging API の料金のページに載っている日本の料金プランの例は、次のとおりです(税別、2026年11月時点)。
| プラン | 月額の固定費 | 無料で送れる通数(月) | 追加のメッセージ |
|---|---|---|---|
| コミュニケーションプラン | 0円 | 200通 | 送れない |
| ライトプラン | 5,000円 | 5,000通 | 送れない |
| スタンダードプラン | 15,000円 | 30,000通 | 1通あたり〜3円 |
同じページには、通数の数え方も書かれています。
- 通数は、メッセージを受け取る人数で数える(1回の送信に吹き出しを複数入れても、1人に送れば1通)
- 特定の人に送る「プッシュメッセージ」、複数の人に送る「マルチキャスト」、友だち全員に送る「ブロードキャスト」、条件で絞って送る「ナローキャスト」は、通数に数える
- ユーザーから話しかけられたときに返す「応答メッセージ」は、通数に数えない
- ブロックしている人など、実際に届かない相手は数えない
- その月の上限を超えて送ろうとすると、エラーになり、メッセージは送られない
業務の通知で気をつけたいのは、最後の点です。通知が上限で止まると、作業員に案件が届かない、お客様にお知らせが届かない、ということが起きます。どのプランにするかは、月に何通送るかを先に見積もって決めます。
たとえば、作業員30人に、1人あたり1日2件の連絡を、月に22日送るとします。30人 × 2件 × 22日 = 1,320通です。この場合、コミュニケーションプランの200通では足りず、ライトプランの5,000通に収まります。お客様2,000人に月4回のお知らせを一斉に送るなら、2,000人 × 4回 = 8,000通で、ライトプランでは足りません。これはあくまで計算の例ですが、こうした見積もりを、送る相手と回数ごとに作っておくと、プランを選び間違えません。
その月にあと何通送れるかは、API で確かめられることも、同じページに書かれています。業務の通知に使うなら、残りの通数を定期的に確かめ、少なくなったら担当者に知らせる仕組みも、一緒に作っておくと安心です。
ミニアプリの「サービスメッセージ」は、業務の連絡には使えないことが多い
認証済ミニアプリには、サービスメッセージという通知の機能があります。ただし、使える場面は限られています。
- ユーザーがミニアプリで行った操作への確認や応答としてだけ送れる(たとえば、予約に対する予約完了の通知や前日のリマインド)
- 1つの操作に対して、送れるのは最大5回まで
- 値下げ、クーポン、新商品などの広告やお知らせは送れない
- あらかじめ用意されたテンプレート(予約、順番待ち、配送の通知など)を使って送る
- LINE公式アカウントのトークではなく、「LINEミニアプリ お知らせ」というトークに表示される
お客様の予約の確認には向いていますが、「会社から作業員に新しい案件を知らせる」ような、ユーザーの操作から始まらない連絡には向きません。こうした連絡は、LINE公式アカウントから Messaging API で送る形になり、上の表の通数に数えられます。
決めること4:誰に届けるかを、どうつなぐか
Messaging API で特定の人にメッセージを送るには、その人のユーザーIDが必要です。ユーザーIDを取得するのページによると、ユーザーID は LINE が発行する値で、表示名や LINE ID とは別のものです。
業務の通知で問題になるのは、「システムの中の田中さん」と「LINE の田中さん」をどうつなぐかです。名前で突き合わせると、同姓の人や、LINE の表示名を変えている人で間違いが起きます。そこで、多くの場合は次のどちらかの流れを作ります。
- 作業員やお客様に、LINE公式アカウントを友だち追加してもらい、ミニアプリ(LIFF)の画面で一度だけ本人確認をしてもらう。LIFF で受け取ったユーザーID を、システムの中のその人に結びつける
- Messaging API のアカウント連携の仕組みを使い、自社のサービスのアカウントと LINE のアカウントを結びつける
アカウント連携のページには、連携するにはユーザーが LINE公式アカウントを友だち追加している必要があると書かれています。また、ブロックしている人にはメッセージが届きません。つまり、「全員が友だち追加してくれる」「誰もブロックしない」ことを前提にはできません。
業務で使うなら、次のことを先に決めておきます。
- 最初の登録(友だち追加と本人確認)を、誰が、いつ、どう案内するか(入社時、現場の初日、予約の初回など)
- まだ登録していない人、ブロックした人には、どう連絡するか(電話、メールなど、ほかの手段を残すか)
- 退職した人や、契約が終わったパートナーのつながりを、誰が外すか
通知を「担当者を決めたら自動で届く」形にするには、この登録の流れが現場で回っていることが前提になります。
決めること5:誰の名義で作るか
LINE Developers では、「プロバイダー」という単位の下に、ミニアプリや LINE公式アカウントの「チャネル」を作ります。ユーザーIDを取得するのページによると、同じユーザーでも、プロバイダーが違えば、別のユーザーID が発行されます。逆に、同じプロバイダーの下なら、チャネルの種類にかかわらず、同じユーザーID になります。
ここから、2つのことが言えます。
- ミニアプリと LINE公式アカウントは、同じプロバイダーの下に作っておく。そうしないと、ミニアプリで受け取ったユーザーID に、公式アカウントからメッセージを送れない
- プロバイダーは、サービスを提供する会社(発注する側)の名義で作っておく。審査でも、プロバイダー名とサービスの提供者が同じであることが求められている
開発会社の名義でプロバイダーを作ってしまうと、あとで開発会社を変えるときに、名義の扱いで困ることがあります。自社の名義で作り直すと、プロバイダーが変わるので、ユーザーID も変わってしまいます。LINE Developers や LINE公式アカウントの管理画面は、発注する会社が持ち、開発会社には必要な権限だけを渡す形にしておきましょう。開発会社を変えるときに引き継ぐものの考え方は、「開発会社を途中で変えるとき」にまとめています。
LINEミニアプリではできないこと
LINEミニアプリはウェブアプリなので、できることは多い一方、LIFF アプリと比べて制限もあります。LINEミニアプリとはのページには、次の違いが書かれています。
- 画面に出る「アクションボタン」を、隠すことができない
- 1つのチャネルに、複数のウェブアプリを入れることができない
- 画面の大きさを選べず、全画面(Full)だけになる
たとえば、画面の大きさを選べないので、トーク画面の一部だけに小さく表示するような作りは、ミニアプリではできません。画面の作りに強いこだわりがある場合は、早い段階で開発会社に伝え、できるかどうかを確かめておきます。
また、ミニアプリは LINE の中で動くので、LINE を使っていない人は使えません。お客様の中に LINE を使わない方が一定数いるなら、同じ機能をふつうのウェブページでも使えるようにするか、電話などの窓口を残すかを決めておきます。ミニアプリはウェブアプリなので、同じ仕組みをウェブ側にも出せるように作っておく、という考え方もあります。
開発会社に相談する前のチェックリスト
ここまでの内容を、開発会社に相談する前に社内で決めておくことの一覧にまとめます。すべてが決まっていなくても大丈夫ですが、どれが決まっていないかが分かっているだけで、相談は進みやすくなります。
何を作るか
- LINE でやりたいことを、通知・画面・会話に分けて書き出した
- 使う人(社員、作業員、パートナー、お客様)と、おおよその人数が分かっている
- 通知を「いつ・誰に・何を」送るかを、業務の流れの中で決めた
いつまでに
- 未認証で始めるか、認証済を目指すかを決めた
- 認証済にするなら、審査の1〜2週間と、却下されたときの余裕をスケジュールに入れた
費用
- 月に送る通数を、相手と回数ごとに見積もった
- その通数に合う LINE公式アカウントのプランを確かめた(開発費とは別にかかる)
- 上限に近づいたときに、誰が気づくかを決めた
つなぎ方と名義
- 最初の登録(友だち追加と本人確認)の案内の仕方を決めた
- 登録していない人、ブロックした人への連絡の手段を決めた
- LINE Developers のプロバイダーと LINE公式アカウントを、自社の名義で持つことにした
- プライバシーポリシーに、LINE から受け取る情報の扱いを書く準備をした
相談の前に用意しておく資料の全体像は、「開発会社に初めて相談する前に」にまとめています。最初から全部を作り込まず、通知だけ、あるいは画面1つだけから始めて、使われ方を見て広げていく進め方については、「MVPとは」も参考にしてください。
つまずきやすいところ
最後に、LINE を使った仕組みでつまずきやすいところを3つ挙げます。
1. 「LINE だから安く早くできる」と考えてしまう。 LINE の中で動くといっても、ミニアプリの中身はウェブアプリです。予約の管理、案件と担当者の管理など、裏側の仕組みは、ふつうの業務システムと同じように作る必要があります。ステラ様の例でも、LINE への自動通知は、案件や作業員を管理するシステムの機能の一つです。LINE は「入口」と「連絡の通り道」で、業務そのものは裏側のシステムが支えています。
2. 通知の上限を、公開してから知る。 通知の通数は、送る人数と回数で増えていきます。使う人が増えた月に、上限で通知が止まることがあります。プランの見直しのタイミングと、残りの通数を見る担当を、最初から決めておきます。
3. 名義を後から直そうとする。 プロバイダーやチャネルを開発会社の名義で作ってしまうと、後から直すのに手間がかかります。ユーザーID はプロバイダーごとに違うため、自社の名義で作り直すと、それまでの登録をやり直してもらうことになりかねません。作り始める前に、名義と権限の持ち方を決めておきます。
おわりに
LINEミニアプリや LINE への通知は、「新しいアプリを入れてもらう」「ID とパスワードを覚えてもらう」という、使い始めのいちばん大きな壁を下げてくれます。ステラ様の例のように、現場の方がふだん使っている LINE に必要な情報が届くだけで、事務の手間と連絡漏れが減ることもあります。
一方で、未認証と認証済の違い、審査の期間、通知の数え方、ユーザーIDと名義の関係など、LINE ならではの決まりもあります。これらを作り始める前に押さえておくと、公開日がずれたり、通知が止まったり、後から作り直したりすることを避けられます。
「LINE でこんなことをしたいけれど、何から決めればいいか分からない」という段階でも、業務の流れを一緒に整理するところからお手伝いできます。
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